「近江ちぢみ本麻」を愛おしむ
– 天然繊維ならではの表情と、伝統の技術 –


近年は、夏本番を迎える前から厳しい暑さの日が増え、全国各地で猛暑が話題になるようになりました。
少し外を歩くだけでも汗ばむような日が続くなか、暑さ対策として水分補給や休息はもちろん、身につける衣類を見直すことも大切です。

そんな季節におすすめしたいのが「近江ちぢみ本麻」。
作務衣甚平はもちろん、紐がなくさっと羽織れるジャケットロング羽織は、冷房対策にもおすすめです。
麻ならではのさらりとした肌触りと優れた通気性で、暑い季節を心地よく過ごすための一着として活躍してくれます。

近江ちぢみ本麻甚平 濃紺

商品:1603 近江ちぢみ本麻甚平 No.1 濃紺

こちらの「本麻」生地について、お客さまから実際にいただいたことのあるご質問を紹介いたします。

Q:「近江ちぢみ本麻作務衣に、織りキズのような部分があります。不良品でしょうか?」

メールで届いた写真

A:「どうぞご安心ください。それは、天然素材の確かな証です。」

麻の生地には、ネップや節糸(ふしいと)、未分繊繊維(みぶんせんせんい)など、さまざまな「個性」が見られます。
これらは製品の不良ではなく、自然の恵みをそのまま生かして織り上げた、天然繊維ならではの豊かな風合いです。

今回は、近江ちぢみ本麻の生地が持つ、愛おしい個性について少し詳しくご紹介いたします。

01|ネップ

ネップ

糸の繊維が絡んでできる小さなかたまり。これを「ネップ(nep)」と呼びます。
植物の茎から採れる麻の繊維を糸にする際、どうしてもわずかな繊維の節(ふし)が生まれ、それが絡むことでネップが生まれます。

和粋庵の近江ちぢみ本麻に使用しているのは、「ラミー(苧麻)」という吸水速乾性とシャリ感が特長の麻です。2〜25cmほどのラミー繊維を紡ぎ、均一な太さの糸に仕上げることは、人の手と機械を尽くしても、実は非常に難しいこと。そのため、麻生地にネップができるのは、むしろ「本物の天然素材」で作られている証なのです。

ラミー(苧麻)繊維

02|節糸

節糸

近江ちぢみ本麻の生地には、細く上質な「60番手」の麻糸を使用しています。
どれだけ品質を一定に保とうとしても、植物特有の茎や皮、節などが混じるため、場所によってどうしても糸の太さに細かな差異が生まれます。
特に、「先染め」の濃色(中紺や茶など)の場合、糸の太さ・細さによって光の当たり方が変わり、部分的に色の差やキズのように見えることがございます。

また、麻の糸は大変繊細で、整経(せいけい)*¹ を行なうときや織る途中で切れてしまうこともあります。
その際、職人が手作業で “はた結び*²” という結び方をして糸を繋ぎます。

このとき、結び目の部分は糸が均一ではなくなるため、わずかに色が抜けて見えたり、小さな隙間のように見えたりすることがあります。こちらも、職人が手仕事で織り進めた、丁寧なものづくりの証なのです。

節糸による隙間

※1 整経(せいけい)|整経は文字通り、『経=たて(糸)』を『整=ととの(える)』作業。必要なだけの経(たて)の本数をとりそろえ、長さ・張力を適度にし、平行に配列して、織物を織る準備をすること。

※2 機(はた)結び(むすび)|切れた糸や新しい糸を一本に繋ぎ合わせるための結び方で、結び目が非常に小さく、ほどけにくいのが特徴。もともと機織りをしているとき、切れた糸を結ぶために使われた結び方。

03|未分繊繊維

未分繊繊維

近江ちぢみ本麻生地には、ごく稀に「白っぽく染まっていない糸」が混ざることがあります。これは「未分繊繊維(みぶんせんせんい)」と呼ばれる、「成長しきっていない未成熟な麻の繊維」です。

糸を紡績する前の工程や、白くさらす工程や染色工程を経てもなお、この未成熟な部分は、どうしても通常の染料が入りにくいという特性を持っています。
無理に染めようと強い薬品を使うと、今度は麻本来のしなやかな強さが失われてしまいます。
そのため、濃色の生地では特に白っぽく見える部分が目立つことがございますが、これもまた、天然の麻繊維をそのまま活かしている近江ちぢみ本麻ならではの特徴です。

04|しぼ加工による色の見え方

しぼ加工による色の見え方

近江ちぢみの特徴のひとつでもある、肌に張り付かない凹凸を「しぼ」と呼びます。
このしぼをつくるために、織り上がった生地を、専用の機械を用いて優しく揉み込む作業を行うのですが、その際に生地に圧力が加わることで、稀に細かな毛羽が立ち、部分的に白っぽく見えることがございます。

こちらもまた、近江ちぢみならではの涼やかな風合いを生み出す、伝統的な加工技術の名残でもあります。

05|不揃いだからこそ、愛おしい

近江ちぢみ本麻作務衣 中紺

商品:1095 近江ちぢみ本麻作務衣 No.96 中紺

このほかにも、製品ごとにわずかな色合いの違いやムラもみられますが、それこそが大量生産の化学繊維にはない、天然素材である麻ならではの最大の魅力です。

今回ご紹介した特徴によって、生地の強度が損なわれたり、ほつれやすくなったりすることはございません。自然で素朴な味わい深さを生み出す、世界に二つとない「唯一の一枚」の表情としてお楽しみいただければ幸いです。

自然の恵みをそのまま生かしながらも、職人の知恵によって麻特有の硬さを和らげ、柔らかな質感へと仕上げた「近江ちぢみ本麻」。

均一ではないからこそ生まれる、独特でやわらかな風合い。
一枚ごとに異なる、本麻ならではの涼やかさと表情を、ぜひ愛おしみながらご堪能ください。

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